<資料2>岸田文雄外務大臣記者会見より国連総会第1委員会関連部分(抜粋)
公開日:2017.04.13
2016年10月28日
(前略)
「核兵器のない世界」を実現するためには、核兵器の非人道性に対する正確な認識と、厳しい安全保障環境に対する冷静な認識に基づき、核兵器国と非核兵器国の協力による具体的・実践的措置を積み重ねていくことが不可欠です。これは私(大臣)からも繰り返し申し上げてきた我が国の基本的立場であります。
今般の国連総会第一委員会においても、このような立場を踏まえ、国際社会に対し、我が国の核兵器廃絶決議への支持を強く訴えてきて参りました。その結果、我が国の決議には、米国を含む、今集計中ですが、約110か国の国が共同提案国となりました。そして全体では167か国の圧倒的多数の支持を得て採択されました。この数字は共に昨年を上回っております。このことが我が国の決議こそ、NPTを柱とする国際的な軍縮・不拡散体制の下で、核兵器国と非核兵器国双方が共に目指すべき「核兵器のない世界」への現実的な道筋を示すものであることを表していると考えます。
一方、核兵器禁止条約の交渉開始を求める決議、この決議案についても投票が行われたわけですが、我が国としましては慎重な検討を重ねた結果、反対票を投じました。反対の理由は、この決議案が、(1)具体的・実践的措置を積み重ね、「核兵器のない世界」を目指すという我が国の基本的立場に合致せず、(2)北朝鮮の核・ミサイル開発への深刻化などに直面している中、核兵器国と非核兵器国の間の対立を一層助長し、その亀裂を深めるものであるからであります。こうした評価は、この決議に対する各国の投票行動、例えば北朝鮮はこの決議に賛成をしています。そして核兵器国は全てこの決議に対しては賛成をしておりません。こうした投票行動にも、こうした評価は表れているのではないか、このように考えます。
他方、その上で、この核兵器禁止条約の交渉開始を始める決議については、結果としまして賛成多数で採択されました。明年このような条約交渉が行われること、これは確実となりました。交渉への参加・不参加を含め、今後の対応ぶりについては、交渉のあり方の詳細に関する今後の議論も踏まえ、また、これまで連携してきた豪、独など中道諸国の動向も見極めつつ、政府全体で検討していくことになりますが、私(大臣)としては、現段階では、交渉に積極的に参加をし、唯一の被爆国として、そして核兵器国、非核兵器国の協力を重視する立場から、主張すべきことはしっかりと主張していきたいと考えております。
質疑応答
【記者】禁止条約交渉決議への日本の反対に対しては被爆者の反発も予想されるが、どう理解を得るのか。
我が国の行動・立場は一貫しております。核兵器国と非核兵器国の協力を重視する立場に立ち、だからこそ、まずは我が国の決議に核兵器国も非核兵器国も、より多くの国に賛成してもらう、こういった努力を続けてきました。結果として昨年を上回る多くの国々から共同提案国にもなってもらいましたし、米国を含む多くの国に共同提案国になってもらいましたし、そして多くの国に賛成もしてもらいました。そして核兵器国と非核兵器国の協力を重視する立場だからこそ、核兵器禁止条約の交渉開始を内容とする決議には反対をしたということであります。そしてこの交渉が始まるのであるならば、核兵器国と非核兵器国の協力を重視する立場から主張すべきことは主張すべきであると私(大臣)は考えているというふうに申し上げました。このようにどの観点からも我が国の立場は一貫しているということは、是非しっかりと訴えていきたい、説明していきたい、このように思っています。
【記者】禁止条約決議と廃絶決議で日米の足並みがそろった形だが、日米間で連携はあったのか。
日本とアメリカにおいて具体的なやり取りは、様々なやり取りは存在します。「核兵器のない世界」を目指すという共通の大きな目的は共有しているわけですので、意思疎通はしっかり図っておりました。
【記者】核廃絶決議案を米に賛成してもらう見返りに日本が禁止条約決議に反対したとの見方もあるが。
そうした意思疎通は図ってきましたが、見返りとかですね、そういったご指摘は当たらないと考えます。
(略)
【記者】日本が掲げる段階的核軍縮の膠着状態があり不満があると言われているが、次に進展がありそうなステップとして何を検討しているか。
CTBT、それからFMCTの早期交渉開始ですとか、あるいはNPTの運用検討会議の去年のありようを見ましても、この体制の強化、まだまだやらなければならない、やはりこうした核兵器国、非核兵器国、全体の中で気運を高めていかなければならないと思います。どこからというのではなくして、NPT、FMCTそしてCTBT、こうした様々な枠組みを通じて努力をしていかなければなりません。(後略)
出典:外務省ウェブサイト
www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken4_000417.html
(記者の質問は編集部による要旨)