<資料1>米国代表ロバート・R・ウッド大使の声明(抜粋訳)
公開日:2017.04.14
【資料1】
米国代表ロバート・R・ウッド大使の声明(抜粋訳)
2016年10月14日
(前略)
今日、この実際的で合意に基づくアプローチ[訳注:米国がこれまで取ってきた核軍縮アプローチ]を捨て去り、代わりに端的に核兵器の禁止を宣言するという根本的に違う道を追い求めるときが来たと信じる国々がある。我々は、現行のアプローチに適用するのと同じ規準に照らして、この新しいアプローチを評価せねばならない。(略)
第1に、核兵器禁止条約はさらなる削減にはまったくつながらない。なぜならそこには核兵器を保有する国々が含まれないからである。禁止条約の提唱者たちは条約はすべての国に開かれていると言うが、自らの安全を核兵器に頼っている国が一体どうして、これを忌むべきものとして廃棄することを意図する交渉に参加できよう。
第2に、禁止条約は既存の不拡散・軍縮体制を弱体化させる。それは国家間に埋めがたい分裂を作り出し、核軍縮をめぐる政治的環境を分極化させ、そしてNPT再検討プロセスであれ国連であれ軍縮会議(CD)であれ、そこにおける今後の合意達成へのいかなる見込みをも事実上、制限する。このような分裂の深まりは、核エネルギー平和利用での協力強化や不拡散の柱の増強のための構想などNPTの他の側面にも影響しかねず、同条約の3本柱を相互促進的な利益ではなく競い合う優先事項として扱う傾向に拍車をかけかねない。核兵器に関わる安全保障上の考慮を排除すれば、核軍縮の進展を持続するのに必要な「効果的措置」について議論する余地はなくなり、ひいては必要な対話が促進されるのではなく妨げられる。
第3に、検証体制は核軍縮・不拡散の合意の成功の鍵を握る要素である。検証能力は、地域的および国際的な安全保障を維持しつつさらなる削減を行うのに必要な信頼を提供する。合衆国は、核兵器国と非核兵器国の双方を含む核軍縮検証のための国際パートナーシップ(IPNDV)などを通じて、将来の軍備管理合意を検証するという極めて現実的な課題に対処すべく積極的に取り組んでいる。しかしながら、今日1つはっきりしているのは、我々はいまだにその課題を克服しておらず、すべての核兵器を禁止する条約を効果的に検証するのに必要な能力を構築できていないということである。
最後に、禁止条約は地域の安全保障を弱体化させる危険をはらんでいる。我々は、世界のいくつかの場所では核兵器が相変わらず平和と安定を維持するため一定の役割を果たしているという現実を否定することはできない。その現実を無視すれば我々は危険にさらされる。さらには、国々がその安全保障環境の見直しを強いられることから地域が不安定になる。各国がそもそも現行の安全保障体制を採用するに至らしめた、根底にある安全保障上の懸念に対処することなく、非核兵器国と核兵器国に同じように現行の安全保障体制を拒否するよう求めるのは、非現実的である。(略)
このような諸々の理由から、合衆国は核兵器禁止条約交渉の場を設定するいかなる決議にも「反対」の票を投じ、交渉には参加しない。他のすべての国に対し同じ行動をとるよう要請する。(後略)
(訳:ピースデポ、強調は編集部)