<資料2>ロシア・フィンランド首脳会談後記者会見でのプーチン大統領発言(抜粋訳)

公開日:2017.07.15

7月1日、ヘルシンキ

質問:
 バルト海地域における(略)軍事状況についてプーチン大統領に尋ねたい。クリミアのロシア編入以降、この地域の緊張が高まり、ロシアはこの地域での軍事プレゼンスの増強を公然と口にした。実際的にこれが意味することは何か、ロシアは何を目指しているのか。

プーチン大統領:
 ロシアは決して緊張を煽ってはいないことを思い起こしてほしい。クリミアに関していえば、ウクライナでクーデターを企てたのはロシアではないし、クリミア半島の人々の生命、健康及び安全を脅かしたのはロシアではない。クリミアとロシアの再統一は完全に無血のうちに、1発の発砲もなく、1人の犠牲者もなく、クリミア住民の意思に基づき国際法に完全に従って行われた。
 完全に挑発であったと我々が考えるクーデターの企みにつづいて、クーデター支持勢力は、欧州及びバルト海地域を含む世界の他の場所で緊張を拡大する行動に出た。NATO は、軍事インフラを我々との境界線に向けて移動させている。
 ミサイル防衛システムが、イランの核脅威に対抗するという現実離れした口実で配備されつつある。だがイランの脅威はすでに除去されイランとの間では条約が締結されている。我が国の核能力を無力化することを目的とするレーダーとミサイル迎撃システムがルーマニアに配備されている。
 迎撃ミサイルを装備したイージス発射システムが、主に射程2000km以上の中距離巡航ミサイルの発射に用いられることはよく知られている。この用途変更は、完全に秘密のうちに数時間で行うことができる。必要なのはコンピュータ・ソフトウェアの変更だけである。その結果、誰も目にすることを欲しない我が国への明白な脅威が生じる。この問題について我々と対話しようとするものはいない。
 そして今、同型のレーダーと迎撃ミサイルシステムの、バルト海地域・ポーランドへの配備が議論されている。我々はどうするのか? どうしたらこれらの脅威を無力化できるだろうか? 我々はしかるべく対処しなければならなくなる。次はバルト諸国へのNATO軍の増強が宣言されるだろう。我が軍部隊の領土内における移動が、攻撃的な行動の例として指摘されるが、我が国との境界線に近い場所でのNATO軍の演習は、どういう訳か攻撃とは扱われない。
 このような状況は、不公正であり現実に逆らうものだ。NATO軍の増強に対して我々はどのように対応するべきなのか? ロシアはフィンランドとの国境から1500㎞離れたところまで部隊を移動させると決定し、それを実行したことを思い返してほしい。それ以来我々は何の変更も行わず、状況はそのままである。その間、バルト諸国におけるNATO軍は増強されている。我々はどうすればよいのか?(略)
質問:
 プーチン大統領に訊ねたい。フィンランドの立場からみると、フィンランドをNATOのほうに押しやろうとしているのがロシアではないかと見える。いずれにせよ、国内ではかつて反NATO的な態度が主流だったが、今はNATOへの接近が真剣に議論されている。なぜ、ロシアはこのように振る舞うのか? 恐らく、大統領はフィンランド国民の安全保障を向上する具体的な提案があるのだと思うが。(略)

プーチン大統領:
 フィンランド市民がなぜ不安を感じているのか理解しがたい。すでに述べたように、我々はすべての軍部隊をフィンランド国境から1500㎞後退させることを決定し、実行した。バルト海や世界の他の地域の様々な緊張にかかわらず、我々はフィンランド国民に不安を与えうるようなことは何もしていない。因みに、我々はフィンランドの中立的地位を認識するがゆえにこのように行動しているのだ。フィンランドがNATOに参加したと想像してほしい。そうなれば、フィンランド軍部隊は全面的に独立した主体的なものではなくなるだろう。フィンランド軍はロシア連邦との国境上に突如出現したNATO軍事インフラの一部となるだろう。
(後略)

(訳:ピースデポ。強調は編集部)

原文:
http://en.kremlin.ru/events/president/transcripts/52312