<資料>武器輸出解除に関するオバマ大統領の共同記者会見における発言(抜粋訳)
公開日:2017.07.15
2016年5月23日、ハノイ
(前略)
我々は、ベトナム沿岸警備隊のための警備艇及び訓練を含む防衛協力を深化しつづけること、そして人道危機への対応における協力を緊密化することに合意した。私はまた、合衆国が50年あまりとってきたベトナムへの軍事装備の輸出禁止を全面的に解除しつつあることを宣言することができる。すべての防衛パートナーに対すると同じように、輸出には、依然として人権に関するものを含む厳しい要件が満たされる必要がある。しかし、この方針変更はベトナムに対し、ベトナムが自衛のために必要とするすべての装備へのアクセスを保証するとともに、なおも消えない冷戦の名残を拭いさるであろう。この変更はまた、ベトナム及びこの地域との長期にわたる強力な防衛上の結びつきを含め、ベトナムとの関係を完全に正常化するという合衆国の誓約を明確にするものだ。
より広くいえば、合衆国とベトナムは、国際的規範とルールが擁護され、航行と飛行が自由で、合法的な通商が妨げられず、さらに紛争が国際法にしたがい法的手段をとおして平和的に解決される、南シナ海を含む地域の秩序を結束して支持する。私はくりかえしたい。合衆国は国際法に許されたあらゆる場所において、引き続き飛行し、航行し、作戦行動をとるであろうし、すべての国が持つ同じように行動する権利を支持するだろう。
以上述べたような重要な前進にもかかわらず、2つの政府には、民主主義と人権の問題を含めて、未だ合意できない分野が残されている。さらに私は、合衆国が、ベトナムに対しても、他のいかなる国に対しても我々と同じ形態の政府を強要しようとするものではないことを明らかにしたい。我々はベトナムの主権と独立を尊重する。同時に我々は、我々が普遍的であると信じる人権の名において発言をつづけるであろう。そこには言論の自由、報道の自由、信教の自由及び集会の自由が含まれる。さらにそこには、市民が、市民社会を通じて自らの共同体及び国家を形成し、より良いものにしてゆこうとする権利が含まれる。
我々は――そして私は――信じる。これらの普遍的な権利が擁護され、我々2か国が、建設的かつ協調的な努力の精神に立って、人権に関する対話の一環としてこれらの事項に関する協議を継続するならば、両国はより強くなり、繁栄するであろう。
(略)
質問:武器輸出禁止の解除について尋ねたい。南シナ海における中国の行動に対するベトナムの軍事的抑止力の増強の必要性は、この決定においてどの程度考慮されているのか。この決定にはカムラン湾を含むベトナムの港湾への米国のアクセスの拡大は含まれているのか。
(略)
オバマ大統領:禁輸解除は中国を念頭においたものでも、他の理由に基づくものでもない。これは、ベトナムとの関係を正常化するための長いプロセスを完了させるという我々の願いに基づくものだ。このプロセスは数十年前に、いくつかのきわめて果敢で困難な対話から始まった。これらの対話の中にはジョン・ケリー現国務長官、トム・カーパー、ジョン・マケイン両上院議員、そして一群のベトナム従軍経験者とベトナム政府内の対話相手によって主導されてきたものが含まれている。
そして時とともに、両国関係は徐々に深まり、広がってきた。現時点において私と政権にとって明らかとなったのは、我々が経済、貿易、安全保障及び人道的活動といったすべての領域においてともに協働してゆくとするならば、全面的禁輸の網をかけないほうが適切だということである。現在、誰に対するものであれ、あらゆる武器売却行為は特定の取引とみなされる。我々はどの取引が適切で、どれが適切ではないかを審査する。そして、たとえ非常に近い同盟国であっても、特定の装備が最終的にどのように使われることになるのかの見通しがよりはっきりするまで、当該売却行為を行わないこともありうる。したがって我々はこれらの売却について事案に即した個別的関与を継続してゆく。しかし、我々は2国間のイデオロギーの違いに基づいて売却を禁止することはない。なぜなら、両国が、現段階において、軍レベルも含めて、共通の利益と相互の尊重を反映した一定水準の信頼と協力を確立したと考えるからである。
事実、包括的パートナーシップをとおして実現されたものの1つに、長きにわたって行われることがなかった両国軍の間の対話がある。そして、すでに合衆国の艦船がベトナムの港に入港できるようになっている。我々は、主として地域における人道危機への対応を巡る軍同士の協力が深化されることを期待している。それが、合衆国艦船の入港の増加を意味する場合もありうるだろう。しかし、艦船の入港は、ベトナム政府の主権と機微な感情を全面的に尊重しつつ、ベトナム政府による招待と協力があって初めて行われることを強調したい。 (後略)
(訳:ピースデポ。強調は編集部)