<資料1>作業文書「枠組み合意のための選択肢」(NGO「中堅国家構想」提出)(抜粋訳)

公開日:2017.07.15

2016年5月4日
A/AC.286/NGO/20

はじめに
1.~5.(略)

枠組み合意

6.枠組み合意とは一般に、大まかなコミットメントと統治機構を提示する条約を言う。その条約は、技術上、法律上その他の取り決めを提供する後続の単独もしくは一連の法的文書によって、あるいは多様な過程を経て、実施され発展する。

7.よく知られた枠組み合意の例が国連気候変動枠組条約(UNFCCC)である。1992年のUNFCCC採択以来、同条約での大まかな合意を実施するために1997年京都議定書や2015年パリ協定といった追加的措置が交渉されてきており、毎年の締約国会議では詳細な継続評価がなされコミットメントが生み出されている。

8.軍縮分野では、通常兵器条約(CCW)が一例である。1980年の採択以降、5つの追加議定書が採択されている。

9.付け加えれば、NPTは第6条の下で、交渉を通じた核兵器廃絶達成のための枠組みを制定している。しかし、そのための手順や措置あるいは時間軸などが明記されておらず、かなり漠然とした性格の枠組みとなっている。

10.世界人権宣言も関連する政治的文書の例であって、枠組み合意のように一連のコミットメントを提示することで、実施措置の採択に向けた基盤を整備している。1948年の採択以来、宣言の各コミットメントを実施するために法的拘束力を持った一連の人権文書が交渉されており、宣言におけるコミットメント自体が国際慣習法とみなされるに至っている。

核軍縮についての枠組み合意

11.核軍縮についての枠組み合意は、核兵器禁止条約の変型版として構築しうる。その内容としては、核兵器の使用禁止条項や既存の核戦力の拡張・近代化の禁止条項のような、主要条項のみを初めに規定するシャポー合意を構成し、核兵器に関する透明性を高めつつ核軍縮の進捗状況を監視するための組織あるいは機構を創設し、備蓄削減、検証、施行、核分裂性物質の管理と処分といった初めからは収拾のつかない問題についてはさらなる交渉を行う旨を規定する、ということが考えられる。また、例え最初のシャポー合意では廃絶への具体的な時間枠を採用できなくても、核兵器の完全廃絶の達成とその永続の確保のための、手順を盛り込むべきである。

12.枠組み合意には、様々な段階で異なる国家によって採択される条項が含まれうる。例えば、もしも発効当初から使用禁止が効力を持つことが合意できないのであれば、使用禁止条項は核依存国よりも早い段階で非核国が採択し、非核国に対する不使用についての議定書を核保有国の参加のもとに採択することも考えられる。非核国の採択する議定書では、開発、保有その他関連する事項を禁止することも考えられる。

13.枠組み合意には、軍縮過程が制度化される、不使用義務の条約上の成文化が早期に可能になる、その他の条項についての議定書が早期に立案されるなど、数多くの利点があるであろう。

14.他方、ほとんどの核武装国と核依存国は、核軍縮に関する包括的な法的拘束力を持った合意の採択を、例えそれが重要事項をさらなる交渉に委ねていたとしても、望んでいないように見受けられる。それらの国々の態度は、核兵器保有と核使用ドクトリンはよりよい安全保障環境が実現するまで必要であり続ける、というものであるように見受けられる。

15.こうしたことから、より厳格度の低い法的措置からなり、より政治的な性格を有するような、修正版の核軍縮枠組み合意のほうが実現可能性が高いかもしれない。

政治的-法的な枠組み合意

16.政治的-法的な枠組みは、NPT再検討会議や第1回軍縮特別総会といった他の議論の場ですでに到達した政治的合意を発展させ、既存の義務や適用可能な法を再確認し、少なくとも手続的な法的コミットメントは付加する、とすることが考えられる。

17.そうした合意では、例えば以下がなされうる。
(a) NPT第6条と国際慣習法における軍縮義務を再確認し、
(b) 核爆発の人道上の結末の存在を承認するとともに、少なくとも核兵器の使用は一般的に国際人道法と両立しないことを確認し、
(c) 不使用の実践を永久に延長し続けるという共通目的を明記し、
(d) 野心的な時間枠の中で核兵器の削減と廃絶を達成するという、拘束力を持たない目標の概略を定め、
(e) さらなる交渉や報告メカニズムなど、上記の目標を達成するための手順を提示し、
(f) 検証に関する引き続きの作業、信頼の醸成、核兵器抜きでの安全保障の確立、といった補助的措置について合意する。

18.政治的-法的な枠組み合意は、核武装国を中間的措置に引き込み、それらの国々の核軍縮への政治的コミットメントを強め、その約束の実現についての野心的な目標を育むための、最良の機会を提供するように思われる。同時にそれは、非核国がより強い措置を早期に採用できる余地を与えるという柔軟性も持っている。こうしたことから、これは、OEWGが2017年の多国間交渉開始を勧告するための最良の選択肢であるかもしれない。

(訳:ピースデポ)