【国連核軍縮公開作業部会への私たちの提案】
「使用禁止」から「包括的禁止」にすすむ段階的アプローチを ――核兵器依存・非核兵器国に貢献の道
公開日:2017.07.24
2016年2月22日から26日にかけてジュネーブで開催された「多国間軍縮交渉を前進させる」ための公開作業部会(OEWG)第1会期の議論については、議長のタニ・トングファクディ大使(タイ)が整理中であり、4月の第3週までに報告される。今後、5月(第2会期)、8月(第3会期)と議論が深化され、秋の国連総会に勧告を含む報告が行われる。ピースデポも、日本市民として如何にしてOEWGに貢献するのかを考えてきた。ここで示されるような内容を、機会が許されれば第2会期で「作業文書」として提出したいと考えている。
核軍縮のための具体的で実現
可能な法的措置の探求
Ⅰ はじめに
(1)「具体的」の意味を考える
OEWGの第1のマンデート(任務)は「核兵器のない世界の達成と維持のために締結される必要のある具体的で効果的な法的措置、法的条項および規範について、実質的に議論すること」1にある。
ここでいう「具体的」(concrete)は、次のような2つの意味を含むと理解するべきである。①法的措置の内容が特定されている(specific)こと、②実現可能性がある(feasible)こと、である。このうち、実現可能性の考察においては、予見しうる時間枠の中で進展をもたらしうること、実現への妥当な最初の担い手(イニシエーター)が予見しうること、が主要な要件として考慮されるべきであろう。
特定性と実現可能性が「具体性」として要求される理由は、2016年OEWGが設立されるに至った経過を想起すると明らかである。すでに2000年NPT再検討会議において、核兵器国は「保有核兵器の完全廃棄を達成するという明確な約束」を行った2。2010年NPT再検討会議においては、すべての締約国が「核兵器のない世界という目標に完全に合致した政策をとる」3、「核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを達成するために特別の努力を払う」4と誓約した。そのような総論的合意がありながらも、核軍縮に具体的な進展はなく、逆に核兵器国において保有核兵器の近代化が公然と進行した。核兵器国に近い将来に核兵器を放棄する兆しが見えない。2015年NPT再検討会議では、このような核軍縮の行き詰まりを打開する要求が高まり、最終文書による合意はできなかったものの、核兵器のない世界の達成と維持に必要とされる法的条項などの効果的措置を熟議するための公開作業部会を設立すべきとの勧告が最終文書案に登場した。それを受けて、同年秋の国連総会は、決議70/33において今回のOEWGを設置することを決定したのである。今回のOEWGはこのような差し迫った認識によって支えられている以上、部会に求められる具体的な措置とは、内容が特定されているのみならず実現可能なもの、すなわち特定性と実現可能性を含めた具体性を有するものであって、現状を変える潜在力を有するものでなければならないであろう。
このように考えたとき、例えば包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効や、兵器用核分裂物質生産禁止条約(FMCT)の交渉は、それを繰り返すだけでは、今回求められている具体的で有効な法的措置とは言えないと考えられる。いずれも特定された内容をもち(specific)、核兵器のない世界にとって必要不可欠な法的措置であることに異論はないものの、過去20年間の経過を考えれば、実現可能性という要件を満たすような具体性をもたないからである。
(2)核軍縮における倫理的側面
核軍縮の行き詰まりを打開する近年における努力の柱の一つは、いわゆる「人道イニシャチブ」と呼ばれるものであった。3回の国際会議の開催を含むこのイニシャチブは、核兵器使用がもたらす壊滅的な人道上の結末について、共通の認識を深めかつ広げることに貢献した。3回の会議をとおして、「核兵器爆発がもたらす短・中・長期的結末が、従来の認識よりもはるかに甚大であること、また、国境での封じ込めが不可能であり、地域的、ひいては地球規模の影響をもたらし、人類の生存さえ脅かしうるものであること」5が再確認された。このような認識は、核兵器国や後述する核依存・非核兵器国も同意している。ある核兵器国代表は、核兵器は「安全保障の問題でもあり人道上の問題でもある」6と述べ、核依存・非核兵器国の多くが参加した共同声明も「核兵器使用の人道上の結末を強調することに異論はない」と述べている7。ここで共有されているのは、必要以上の破壊力や無差別性に起因する、核兵器が本来的に持つ非倫理性の認識である。
多国間協議による核軍縮努力においてはもう一つの倫理的側面が認識されなければならない。NPT第6条は、締約国に核軍縮への「誠実な交渉」を求めている8。これは多様な政治環境に置かれている諸国による、平等で独立した主権を重んじた交渉の結果が、締約国の良心を前提にした合意となって現れていることを示す文言である。「誠実さ」の倫理性の一つの形は、軍縮を前進させるために「自分自身が率先して行う」締約国の姿勢として現れる。米大統領の2009年プラハ演説が期待と支持の広がりを生み出したのは、自国の「行動する道義的責任」を語り、自国だけでは成就できない困難な事業について「しかし我々は先導できる。スタートを切ることができる」と述べた倫理性に負うところが大きいであろう9。この倫理的側面の回復が核軍縮交渉の行き詰まりの打開のために必要である。
以上のような具体性と倫理性の認識に立って、私たちは以下の提案を行う。
Ⅱ 包括的核兵器禁止条約(CNWC) への段階的アプローチ
(1)段階的アプローチ
包括的核兵器禁止条約(CNWC)は検証制度を伴う包括的な条約として、核兵器のない世界の達成と維持のためには必ず必要となる条約である。また、CNWCは核兵器国も同意し締約国となる普遍性が求められる法的文書である。国連事務総長の2008年の5項目提案などによってハイライトされ、その重要性が認識される一方、度重なる国連総会決議にも拘わらず、その交渉開始へのハードルは高いままに留まっている。そんな中で、最近の簡易型核兵器禁止条約(NBT)の提案を契機として法的枠組みについての多様な見解が現れることになった。「人道イニシャチブ」がこの議論の活性化に大きく貢献した。多様な意見交換が行われた結果として、私たちはCNWCという目標を見失わない形で、それへの「段階的アプローチ」10を構想することが可能になった。
私たちは、前記の「具体性」と「倫理性」の原則にたって、「核兵器の使用を禁止する条約」(以下「使用禁止条約」)を、NBTやCNWCとの関連性を考慮しながらも、独立して追求する意義をもつ第一段階における法的措置であると考え、それを先行的に締結することを提案する。このアプローチは、以下に述べるように、NBTやCNWCに向かう過程において「具体性」とりわけ「実現可能性」の観点から使用禁止がもつユニークな利点を活用することができる。また、その実現によって、第一段階に続く第二段階以後への眺望を開くことが期待できる。
使用禁止条約を独立して先行させる理由は、核兵器の「使用」と、「保有」や「備蓄」との間に画然とした違いがあると認められるからである。「使用」には相手国に「壊滅的な人道上の結末」をもたらさんとする使用する側の意図が存在し、その結末は、どれだけ限定的な使用であっても、人間の健康や地球環境、社会・経済システムに壊滅的な長期にわたる被害をもたらす。しかし、これらの性質は「保有」や「備蓄」にはない。
(2)「使用禁止条約」への新しい考察
「使用禁止条約」は長く国連総会で議論されてきたテーマであり、「核兵器使用禁止条約(CPUNW)」の名を冠した国連総会決議は1982年に登場して以来35年の歴史を持つ11。その間に冷戦の終結やNPTの無期限延長を含め、国際関係も核軍縮交渉の歴史も大きな変遷を遂げた。しかも、今回のOEWGで検討すべき法的措置に求められる「具体性」や「倫理性」の原則に照らしたとき、CPUNW決議によって使用禁止条約をめざすことには、次のような難点がある。まず、CPUNW決議が、機能不全に陥って久しいCD(ジュネーブ軍縮会議)での交渉を求め続けていることは、具体性とりわけ実現可能性における困難がある。また、NPT外の核兵器保有国であるインドが推進してきた同決議案の論理は「他の国が使用を禁止すれば自らも使用しない」というものであり、今日の核軍縮交渉の行き詰まりを打開する上で求められている倫理性の点において疑問がもたれる。よって本論では、同決議とは別の論理と主体を明確にすることによって、「使用禁止条約」の実現について新しい考察を加える。
新たな考察によって指摘されるもっとも重要な点は、非核兵器地帯の構成国が「使用禁止条約」の制定を求める特別の資格を持っているという点である。これらの国々は、NPTよりも厳しい内容をもった地域条約によって法的拘束力をもって非核兵器国の地位を選択した。協調的な安全保障制度の第一歩として核兵器に依存しない地帯を形成したこれらの国々は、その地位にふさわしい要求として、核兵器国から法的拘束力のある安全の保証を得るための議定書を定めて核兵器国にそれへの加盟を求めている。
しかし、核兵器の使用は国境と時間を越えて壊滅的被害をもたらすという近年の更新された知見によれば、そのような国々でも、地帯外で起こった核兵器の使用による被害からは自由ではない。したがって、これらの国々は、核兵器使用のグローバルな禁止を要求する道義的な資格をもっていると言えるであろう。本論では、非核兵器地帯の構成国が使用禁止条約のイニシャチブを担うアプローチを論理化して、新しい精神を持った「核兵器使用禁止条約」を提案する。
このようにして成立する「使用禁止条約」が核兵器国によって支持され、核兵器が使用されなくなる可能性は低いと考えられるかもしれない。そうであったとしても、非核兵器地帯条約加盟国が地帯内に対してのみならず、グローバルな「使用禁止条約」を制定して核兵器国に順守を要求することは、非核兵器地帯を設立した目的の延長線上において追求されるべき、当然の法的要請であると認められる。
もちろん、「使用禁止条約」でもたらされる安全の恩恵は非核兵器地帯の構成国に限定されるものではなく、地球上のすべての国民がその恩恵に浴する。したがって、その恩恵を自覚するすべての国が、このような条約の制定のイニシエーターとなる資格がある。もちろん、同条約への加盟も勧奨される。非核兵器地帯構成国の適格性を強調するのは、多国間軍縮交渉におけるイニシエーターの倫理上の立場が重要な意味をもつと考えられるからである。
(3)部分的措置
核兵器が実際に使用されていない「使用の威嚇」だけでは「壊滅的な人道上の結末」は引き起こされない。だが使用禁止条約においては、「使用の威嚇」は「使用」と同じく禁止対象とされるべきである。なぜなら、国連憲章が「武力による威嚇」と「武力の行使」を同列に慎むべきものとしている(第2条3)ことに現れているように、条約によって違法化された「使用」という行為を示唆して「威嚇」することは、「使用」そのものと同様に違法とみなされるべきだからである。
CNWCが制定されるまでの「使用禁止条約」はあくまでも部分的な法的措置である。核保有国が「使用禁止条約」を支持し締約国となる可能性が高くない現状においては、まず、2000年のNPT再検討会議の最終合意文書以来繰り返し確認されているように、「核兵器の使用または使用の威嚇を防止する唯一の絶対的な保証は、核兵器の完全廃棄である」12との基本認識の妥当性は失われない。また、核兵器保有国が「使用禁止条約」に参加したとしても、核兵器が存在する限り、事故、過失などによる意図されない核爆発のリスクは消滅しない。つまり、使用禁止条約によっても核兵器の完全廃棄を確実にするCNWCの追求は引き続き緊急課題であり続ける。
このように「使用禁止条約」は部分的措置ではあるが、それを達成することによってCNWCへの新しい眺望を得ることができるような第一段階の措置である。とはいえ、その措置は、「使用」と「使用の威嚇」に限定することによって、「保有」や「備蓄」などの規制においては必要とされる検証システムに関する複雑な交渉を回避し、比較的短期間で実現が可能と考えられるので、核軍縮をめぐる状況に、変化を生み出す。
Ⅲ 使用禁止条約と
核兵器に依存する非核兵器国
(1)核依存・非核兵器国の核軍縮における役割
核兵器のない世界の達成のためには、すべての国の努力が必要であることは当然であるが、2013年OEWG報告書が「国々には異なる役割や機能がある」13と述べたように、それぞれの国にとって貢献すべき効果的な分野や方法が存在するであろう。核兵器国が核軍縮を進めるべき当事国であることは論を待たないが、核兵器のない世界に向かう過程において非核兵器国が果たすべき役割を具体的に論じることの重要さを指摘する論調を、2013年OEWG報告書において窺うことができる。同報告書は、非核兵器国が「グローバルな核軍縮を促進する役割を担っている」との見解が共有されたと述べている14。
核兵器との関係において、国は次の4つに類型化することができる。①NPT下の核兵器国、②NPT外の核保有国、③核兵器に依存する非核兵器国(以下「核依存・非核兵器国」)、そして④非核兵器地帯を構成する非核兵器国、である。核抑止力が、核兵器を使用する意図と態勢を維持することに基礎をおいている以上、前述したように、①または②の国家は本論の趣旨における使用禁止条約に参加することは期待できない。④非核兵器地帯構成国が使用禁止条約の成立において果たしうる重要な役割については第Ⅱ章ですでに述べたとおりである。ここでは③核依存・非核兵器国が「使用禁止条約」に関して果たしうる役割を検討する。
核依存・非核兵器国は、核兵器国との軍事同盟の関係にある国々である。北大西洋条約機構(NATO)、アジア太平洋における米国との二国間条約、集団的安全保障条約(タシケント条約)機構(CSTO)15等に参加する非核兵器国が該当する。これらの国々における核兵器への依存の具体的内容は必ずしも明らかではないが、核兵器の非核国への配備や作戦分担まで踏み込んだ協力関係や配備なしの拡大核抑止力に限定した協力関係など多岐にわたっている。これらの国々は多くの場合、自国の安全保障の重要な部分を核兵器国のもつ核抑止力に依存しており、逆に核兵器国は、核保有をつづける重要な理由の一つに「同盟上の義務の履行」を公然と掲げている16。したがって、核依存・非核兵器国が核兵器に依存する政策を変更することは、核兵器国の核軍縮に直接的に貢献する。
(2) 安全保障政策上の核兵器の役割の低減
このように、核依存・非核兵器国が自国の安全保障政策における核兵器の役割を低減するために行動することが、核兵器国の核軍縮に貢献することは、核軍縮の多国間協議の場ですでに論じられてきた。NPT再検討プロセスにおいて、核兵器の「役割の低減」を行いその履行状況を報告することが、2010年までは核兵器国に対して求められてきた17。しかし、この要求は核兵器国だけではなく核兵器国と同盟関係にある国々にも適用されるべきであるという主張がその後提起された。2013年OEWGにおいても、この議論が行われたことが報告されている18。これらの結果、2015NPT再検討会議の最終文書案では、この要求はすべての関係国に要請された19。
核依存・非核兵器国の「使用禁止条約」に対する態度は、このような「自国の安全保障政策における核兵器の役割をいかに低減するか」という課題の下に検討されるべきであろう。核依存・非核兵器国にとって、包括的な核兵器禁止条約(CNWC)や簡易型核兵器禁止条約(NBT)に対する支持・参加と「使用禁止条約」に対する支持・参加との間に、核兵器依存政策と矛盾するという点において大きな差はないであろう。しかし、核兵器国にとっては、前者と後者の条約の間に自国の雇用や産業を含む社会・経済に及ぼす直接的な影響において、大きな違いが発生する。したがって、この点を考慮すると、核依存・非核兵器国は、核兵器依存を無くす方向へ政策転換を図る第一歩として「使用禁止条約」への参加を考慮することが、よりハードルの低い選択となる。
(3)核依存・非核兵器国の「使用禁止条約」へのアプローチ
「使用禁止条約」への支持・参加を追求する核依存・非核兵器国のアプローチは、それぞれの国の置かれた多様な地域的安全保障環境、歴史的・文化的背景、宗教的背景などを反映して、異なったものになるであろう。非核兵器地帯設立に向かうことが適切なケースもあろうし、使用禁止条約への直接的な参加を核兵器国との同盟関係を壊さずに追求できるケースもあり得る。いずれの場合においても、核軍縮の行き詰まりを打開するために具体性と倫理性の原則に立って緊急に取り組むことが求められる。
核兵器国と軍事同盟関係にある非核兵器国がすべて核依存・非核兵器国ではない。軍事同盟下の非核国であっても核兵器の役割を排除し核兵器を厳しく否定する政策を選択している国は、すでに存在する。中央アジア非核兵器地帯条約や東南アジア非核兵器地帯条約に加盟するいくつかの非核兵器国がそれである。それらの国は、非核兵器地帯条約によって核兵器に依存しない地域的な協調的安全保障の仕組みの下にあり、Ⅱ章で述べたように、使用禁止条約に参加するのに障害がないどころか、提案国の役割を担うのにふさわしい条件を備えている。この事実は、核依存・非核兵器国は、非核兵器地帯の設立を追求することによって使用禁止条約に参加する道を開くことができることを示している。
この文脈において、北東アジアと東欧地域の非核兵器地帯化が検討されるべきである。北東アジアは戦争被爆を経験した被爆者が、国境を越えて今なお生活している地域である。また、朝鮮戦争の停戦以来の軍事的緊張が続く中で、核兵器使用の危険が現在も目に見えて存在している地域である。この地域の核依存・非核兵器国は北東アジア非核地帯設立の目標を掲げることによって「使用禁止条約」の推進に貢献することができる。一方、NATOは一日も早く全体として非核化されるべきであるが、それとは別に適切な地域における非核兵器地帯を先行して設立することが可能である。とりわけロシアと接する東欧地域における非核兵器地帯の設立はヨーロッパの緊張緩和に大きく貢献する。この地域の非核兵器国にイニシャチブが生まれ「使用禁止条約」への支持・参加国が生まれれば、その意義は極めて大きい。
ヨーロッパのNATO加盟国においては、「使用禁止条約」への別のアプローチの可能性も考えることができる。ヨーロッパは繰り返される戦争の惨禍の経験から国際赤十字運動を生んだ歴史があり、その運動は今日の「人道アプローチ」創出の原動力となった20。また、ローマ法王の国連総会演説21に現れたような、国連憲章との整合性という根源的なところから核兵器を否定する宗教的リーダーシップも存在する。これらの倫理性の基盤をもつ世論の圧力によって、NATO加盟の非核兵器国が使用禁止条約への参加を決定する道筋がありうるであろう。NATO加盟の非核兵器国が「使用禁止条約」を巡って多様な対応を示すことによって、新しい変化が始まることが期待される。
第Ⅱ章の最後のパラグラフにおいて、「使用禁止条約」が第1段階における部分的措置であることを強調した。NBTやCNWCに至る第2段階以後の過程の眺望は、とりわけ本章(第Ⅲ章)に述べた核依存・非核兵器国が「使用禁止条約」にどのように対応するかによって、さまざまな形で開けて行くと期待される。NBTやCNWCを推進するための努力が、同時並行的に継続されるべきことは言うまでもない。(田巻一彦、梅林宏道)
注
1 国連総会決議「多国間核軍縮交渉を前進させる」(70/33)。
2 2000年NPT再検討会議最終文書、第1部「第6条及び前文第8~12節」、第15節。NPT/CONF. 2000/28
3 2010年NPT再検討会議最終文書・第1巻第1部「結論ならびに今後の行動に向けた勧告」、行動1。NPT/CONF.2010/50(vol.I)
4 同・Bⅲ。
5 国連総会決議「核兵器の禁止と廃絶に向けた人道の誓約」(70/48)前文。
6 2010年NPT再検討会議、主委員会Ⅰ・下部機関Ⅰ、ロバート・ウッド米軍縮会議特別代表の声明、15年5月8日。
7 第70回国連総会第1委員会、27か国共同声明、15年11月2日。
8 NPT第6条「核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行う。」
9 「核保有国として、核兵器を使用した唯一の国として、米国には行動する道義的責任がある。我々だけではこの努力を成功に導くことはできない。しかし我々は先導できる。スタートを切ることができる。」(バラク・オバマ、09年4月5日、プラハ)
10 CNWCについてモデルNWC(以下「モデル条約」)が専門家グループによって作成され、国連文書(A/62/650)及び2013年OEWGの作業文書(A/AC.281/WP.7)となっている。モデル条約も「段階的」プロセスを提案しているが、ここでの「段階的アプローチ」とは異なる意味で使われている。モデル条約の場合は、核保有国の核兵器の廃棄を、警戒態勢の解除、配備の中止、弾頭の運搬手段からの除去、弾頭の無能化、ピットの除去と解体、核物質の国際管理下への提出、という段階を経て行うという意味である。
11 決議はインドによって提案された。最初の決議はA/RES/37/100C(1982年)であり、最新の決議はA/RES/70/62(2015年)。
12 2000年NPT再検討会議最終文書・第1部「1995年再検討・延長会議の決定を考慮した条約運用の再検討」第Ⅶ条、NPT/CONF.2000/28 (Parts I and II)、及び(2010年NPT再検討会議最終文書「結論ならびに今後の行動に向けた勧告」1.C.i、NPT/CONF.2010/50(vol.I)。
13 「核兵器のない世界の達成と維持のための多国間軍縮交渉の前進に向けた国連公開作業部会報告書」、第41節、13年10月9日、A/68/514。
14 同第42節。
15 集団的安全保障条約(CST)第4条。同条約は94年、アルメニア、カザフスタン、キルギスタン、ロシア、タジキスタン及びウズベキスタンの6か国によって発効され、94年にアゼルバイジャン、グルジア(現ジョージア)及びベラルーシが追加加盟した。しかし99年の延長議定書にアゼルバイジャン、グルジア、ウズベキスタンが署名せずに離脱、現在の加盟国は6か国である。02年には集団的安全保障条約機構(CSTO)憲章及びCSTO地位協定が調印され、集団的な執行体制などを整えた。
16 たとえば米国は、「同盟国やパートナーに安心を提供する」ことを核兵器政策の主要な目標の一つと再確認している。米国「核態勢の見直し(NPR)」(2010年4月)
17 2010年NPT再検討会議最終文書・第1巻第1部「結論ならびに今後の行動に向けた勧告」、行動5。NPT/CONF.2010/50(vol.I)
18 文献13、第44節。
19 「154-7 会議はすべての関係国が次の再検討サイクルを通して、軍事及び安全保障上の概念、ドクトリン、政策を、それらにおける核兵器の役割及び重要性をさらに縮小するという見地から検討しつづけることを要請する。」NPT/CONF.2015/WP.58
20 たとえば、2010年4月、NPT再検討会議の直前にヤコブ・ケレンベルガー総裁がジュネーブで行った演説が会議に大きな影響を与えた。www.icrc.org/web/eng/siteeng0.nsf/html/nuclear-weapons-statement-200410
21 フランシスコ法王の国連総会での演説、2015年9月。
www.holyseemission.org/contents//statements/statements-56054736193b87.20279259.php