<資料2>APLNの「先行不使用」支持声明
公開日:2016.12.22
伝えられるところによれば、オバマ政権は彼の任期の最終局面で、いかに核軍備管理アジェンダを再活性化するか考慮している。長らく懸案となっている重要なイニシアチブには、米国がいかなる状況でも核兵器を先に使用しない誓約をするという「先行不使用」政策がある。
オバマ大統領の核兵器のない世界のビジョンに目に見える前進がほとんど見られない中で、我々は長年の米国核戦略に対するこの重要な変更を歓迎する。
オバマ大統領は核政策課題に対する力強い公約とともに大統領に就任した。彼は2009年にプラハで行った最初の主要な外交政策演説で、核兵器の脅威のない世界の力強いビジョンを明言した。彼の大統領としての功績にはロシアとの新START 条約、4回の核保安サミット、イランとの核平和利用交渉、歴史的な5月のヒロシマ訪問が含まれる。
大胆な政策課題は立ち往生したままだ。
「先行不使用」は象徴的な価値と、すぐれて実際的な意義の両面を持つ。その潜在的利益はありうる欠点を大きく上回っている。「先行不使用」はリスクの高いドクトリンや兵器の配備からの転換を促す。先行不使用政策は前進配備、警報即発射態勢、現場指揮官への権限事前委譲の必要をなくす。つまり事故や非承認の使用の見込みが著しく低下することになる。「先行不使用」は世界的に増大している核兵器への人道上の懸念にも応えるものである。
もし、アメリカの例に倣って「先行不使用」が全ての核武装国家によって採用されれば、この政策は地球規模の核規制レジームの目玉となり、戦略的安定性を強化し、危機に際しての不安定さを低減させ、核兵器と通常兵器の境界線を明確にし、核兵器使用に反対する規範をさらに強固にする。
オバマ大統領は「核兵器を使用した唯一の国として」米国は「核兵器廃絶を先導し続ける道徳的義務がある」と正しくも語った。先行不使用条約から生まれる信頼の向上は核武装国間の緊張を緩和させ、さらなる核軍縮の進展へとつながる環境の醸成に貢献する。
われわれは米国の「先行不使用政策」を奨励し、アジア太平洋地域の同盟国がそれを支持するよう要求する。
署名者
ムン・チュンイン/共同呼びかけ人、ラメシュ・タクール/共同呼びかけ人、阿部信泰/日本原子力委員会委員、元国連軍縮事務次長、ハスミー・アガム/マレーシア人権委員会議長、元国連大使、ペ・ミョンボク/韓国中央日報論説委員、ジム・ボルガー/元ニュージーランド首相、ジョン・カールソン/元オーストラリア防衛・不拡散事務所長、サイモン・チェスターマン/シンガポール国立大学法学部長、チョン・ヨンウ/元韓国大統領上級補佐官(外交、国家安全保障)、サイ・リツニョ/中国現代国際関係研究所シニアフェロー、ジャヤンタ・ダナパラ/元国連軍縮事務次長、ギャレス・エバンス/オーストラリア国立大学総長、元オーストラリア外相、ファン・ジーシー/中国社会科学研究院戦略研究ディレクター(北京)、トレバー・フィンドレイ/メルボルン大学、国連事務総長軍縮諮問委員、マリアン・ハンソン/クイーンズランド大学、ピーター・ヘイズ/ノーチラス研究所代表、ペルベス・フードボイ/物理学教授、国連事務総長軍縮諮問委員、ファン・ヨンス/韓国核不拡散管理研究所長、ジェハング・カラマト/元パキスタン統合参謀本部議長、陸軍参謀本部、川口順子/元日本外相、キム・スンファン/元韓国外相、キショレ・マブバニ/シンガポール国立大学リークワンユー公共政策部長、元シンガポール国連常任代表、ラリス・マンシン/元外相、駐英上級委員、駐米大使、C・ラジャ・モハン/インドカーネギー財団理事長、ヘワ・マタラ・ガマジ・シリパラ・パリハッカラ/元スリランカ北部州知事、ジェフリー・パーマー卿/元ニュージーランド首相、デービッド・パイン/元ニュージーランド在マレーシア高等弁務官、カシット・ピロミャ/元タイ外相、スリン・ピツワン/元ASEAN事務局長、タイ外相、R・ラジャラマン/ジャワハラルネルー大学理論物理学名誉教授、マンプリート・セシ/空軍研究センター(ニューデリー)、シェン・ディンリ/復旦大学国際研究所副所長(上海)、ソン・ミンソン/元外相、北朝鮮研究大学学長、ラケシュ・スード/元インド首相公使(核不拡散)、カルロス・ソレタ/元駐露フィリピン大使、鈴木達治郎/長崎大学核兵器廃絶研究センター長、トン・ヌ・シ・ニン/トリビエ国際大学学長、元駐EUベトナム大使、ニャモソー・トゥヤ/元モンゴル外相、シャシ・ヤギ/元印空軍長官、シッダース・バラダラヤン/ワイヤ誌編集長(インド)、アルン・ビシュワナサン/国立高等学術研究院、インド科学研究院(バンガロール)、ウィリョノ・サストロハンドヨ/元駐豪インドネシア大使、アンゲラ・ウッドワード/カンタベリー大学(ニュージーランド)、湯崎英彦/広島県知事
(訳:ピースデポ)
原文: www.a-pln.org/statements/statements_view/APLN_No_First_Use_Statement_2016