<資料1>米上院議員有志からオバマ大統領への書簡
公開日:2016.12.22
2016年7月20日
親愛なる大統領閣下
最近の歴史的な広島訪問時に、貴職は核保有国に対して「恐怖の論理から逃れ、核のない世界を追求する勇気を持たねばならない」と訴えた。このビジョンを我々が生きている間に実現できないかもしれないとの認識を語る一方で、貴職は「粘り強い努力によって破滅の可能性を減ずる」と述べた。我々はそれに同意する。そして貴職の訪問に拍手を送る。
貴職が合衆国核政策の包括的な見直しを行っているという報道に照らして、我々は合衆国の核兵器関連支出を減額し、核戦争のリスクを減らすために、貴職が執務室での最後の日々に大胆な行動を取ることを励ますためにこの手紙を書いている。我々が貴職に検討を求める措置は、過剰な核近代化計画の縮小、核兵器の先行不使用政策の採用、そして警報即発射計画を取り消すことである。これらのオプションは、全て合衆国の国家安全保障を強化し、「わが国の安全保障戦略における核兵器の役割を低減する」という、2009年プラハにおける貴職の誓約を前進させる。
何よりもまず我々は、貴職が不必要な新型核兵器と運搬手段の生産計画を縮小することを要請する。中立的な見積りによれば、核兵器の維持と近代化計画には、向こう30年間で約1 兆ドルが必要とされる。これは、非核兵器に多額の支出が必要となった時に、我が国の防衛予算に対する巨大な圧力となるだろう。とりわけ我々は、貴職が長距離スタンドオフ兵器と呼ばれる新型空中発射式核巡航ミサイルという、核戦争のリスクを増大させるだろう不必要な能力に200億ドルを費やす計画を取り消すよう要請する。
現行の核近代化計画を支持する者たちは、ロシアとの新START条約を議会で承認させるための取引の一部として、貴職が新型核兵器の生産を約束したと頑迷に主張している。しかし、この約束は現在と異なる予算環境の下で、核兵器近代化の総費用がまだ明らかにされない中でなされたものだ。
無駄な核兵器支出を縮小するのに加えて、我々は合衆国の核態勢の変更を支持する。冷戦終結後四半世紀以上がたつ今も、米国は、紛争における核先行使用オプションを維持している。このオプションを保持することによって、奇襲攻撃に対する相互の恐怖は増幅され、他の核武装国に対して保有核兵器の高度警戒態勢を維持する圧力が加えられ、意図せざる核戦争のリスクが増大する。
我々の比類のない通常兵器の軍事能力に照らせば、我々は本土や同盟国への非核攻撃を抑止するために核の先行使用による威嚇に依存する必要はない。先行不使用政策を採用することによって、合衆国は、我々の安全保障に対する通常兵器と核兵器による脅威の両方を抑止しつつ、偶発的な核紛争のリスクを減少させることができるであろう。
最後に、合衆国は現在、核攻撃警報があれば、即、核兵器を発射する計画を維持している。この政策は危機に際して大統領が注意深く思慮する能力を損ね、誤警報の際に悲惨な過ちが犯される可能性を高める。不慮の核戦争のリスクをさらに低下させるため、我々は警報即発射方式を中止することによって、司令官が核兵器の使用を検討することのできる時間を長くすることを支持する。
核戦争はアメリカの国家安全保障に由々しきリスクをもたらす。広島と長崎への核爆撃の教訓は明白である。核兵器は二度と使用されてはならない。我々は核戦争のリスクを低下させ米国の安全保障上の利益を守るために、なしうる全てのことをなさねばならない。
敬具
合衆国上院議員
エドワード・J・マーキー
ダイアン・ファインスタイン
アル・フランケン
バーバラ・ボクサー
ジェフリー・A・マークリー
バーナード・サンダース
エリザベス・ウォレン
シェロッド・ブラウン
パトリック・リーヒ
ロン・ワイデン
(訳:ピースデポ)