<資料3>オバマ米大統領の16年3月30日付「ワシントン・ポスト」紙への寄稿(全訳)
公開日:2017.07.17
核兵器のない世界のビジョンを、いかにして現実にするか
2016年3月30日
アメリカ合衆国大統領
バラク・オバマ
グローバルな安全と平和に対するあらゆる脅威の中で、最も危険なのは核兵器拡散と潜在的な核兵器の使用である。それゆえに7年前、私はプラハでアメリカが核兵器拡散を防止し、核兵器のない世界を追求することを約束した。このビジョンは「我々は地球上から核兵器が完全に取り除かれる日を追求する」と発言したロナルド・レーガンを含む民主党、共和党の私の前任者たちのビジョンに基づくものだ。
3月31日、私はワシントンで、テロリストが核兵器を入手したり使用したりすることを防ぐという、我々のプラハ・アジェンダの主柱の建設を前進させるため、50か国以上の世界のリーダーたちを、第4回核保安サミットに迎える。我々は、例えば12以上の国々から高濃縮ウラン、プルトニウムを成功裏に撤去したという進捗を確認する。アメリカを含めた国々は新たな約束をする。そして我々は核保安を支持する国際条約や機関を強化し続けるだろう。
ISILもしくはISISと呼ばれるテロリスト集団などの組織による脅威が継続する以上、我々は世界一危険なネットワークが世界一危険な兵器を手に入れるのを防ぐため、同盟国やパートナーとともに対テロ努力を見なおすであろう。
核テロの防止以上に、私がプラハで概略を説明した、より広範なビジョンに向けた重要な進展があった。
第1に、我々は核兵器のない世界に向けた具体的な歩みを続けている。アメリカとロシアの配備核弾頭数を2018年までに1950年代以来過去最少のレベルにするために、アメリカとロシアは引き続き新START条約の義務を遵守する道を進んでいる。アメリカが敵を思いとどまらせ同盟国の安全を保障するために安全で効果的な保有核兵器を維持しているさなかにも、私は我々の国家安全保障戦略においては核兵器の数と役割を減じてきた。私はまた新型核弾頭の開発を中止し、アメリカが核兵器を使用したり使用の威嚇をするような偶発的状況が生ずる可能性を減少させてきた。
第2に、我々は核兵器の拡散を防ぐ、核不拡散条約を含むグローバルなレジームを強化してきた。我々は特にイランのような国で、核兵器の拡散を防止するための国際社会の団結に成功してきた。核兵器を保有したイランは、我々と我々の同盟国、パートナーの国家安全保障に対し受け入れがたい脅威を作り出すことになったかもしれない。それは中東地域の核軍備競争の引き金になったかもしれないし、グローバルな不拡散体制が瓦解し始めることになったかもしれない。
イランは当初外交的解決を拒否したが、米国は核兵器に対する義務を守らなかった国家が直面することになる結果を説明しながら、イランに制裁を課すべく国際社会を動員した。厳しい交渉の後、イランは核兵器保有に向かうあらゆる道筋を閉ざすという核取引に合意した。いまやイランは核プログラムを監視する、これまで交渉されたどれよりも包括的な査察体制の下にある。言いかえれば、この取引により、世界は核爆弾を手にした国がもうひとつ増えるのを防いだのである。そして我々はイランが約束を果たすことを注意深く確認中である。
第3に、我々は自らの責任を果たしている国々が平和的核エネルギーにアクセスできるよう、民生分野の核協力の新しい枠組みを追求している。私が7年前に設置を呼びかけた国際燃料バンクが今、カザフスタンで建設中である。これにより国々は、転用や盗難のリスクのあるウラン濃縮を行わずに自分たちの必要なエネルギーを得ることができるようになるだろう。
これらの進展にもかかわらず、私は我々が未解決の問題を抱えていることをまず認める。ロシアにINF条約への違反がある以上、我々はロシアにその義務を完全に遵守するよう求め続ける。我々の軍の指導者たちと同じように、私は冷戦時代の強大な保有核兵器は、今日の脅威に適合していないと引きつづき信じている。合わせて世界の核兵器の90パーセント超を保有するアメリカとロシアはさらに備蓄を減らす交渉をすべきである。
国際社会は、最近の核実験やミサイル発射を含む北朝鮮の継続的な挑発に対して結束しなければならない。国連安全保障理事会により北朝鮮に課された追加制裁は、違反には結果が伴うことを示している。アメリカは同盟国やパートナーとともに、平和的手段による朝鮮半島の完全かつ検証可能な非核化のために協働してゆく。
さらに広くいえば、世界の安全保障はアメリカを含む国々に対して包括的核実験禁止条約の批准を求めており、兵器用核分裂物質の生産をきっぱりと終了させる新しい条約を締結することを求めている。
私はプラハで、核兵器のない世界の安全と平和は、すぐには、おそらく私の生きている間には達成されないだろうと言った。しかし我々は既に始めている。核兵器を使用した唯一の国として、アメリカは核兵器廃絶を先導する道義的責任がある。しかし、このビジョンは一つの国では達成できない。それは世界全体の仕事である。
我々の前には高いハードルがはっきり見えている。しかし私は、核兵器の拡散は不可避だという宿命論におちいってはいけないと信じている。我々はありのままの世界の現実に対処すると同時に、あるべき世界の姿を追求しなければならない。
(訳:ピースデポ)
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