第4回「脱軍備・平和基礎講座」報告
2021.09.27
「協調的安全保障体制-朝鮮半島非核化から北東アジア非核兵器地帯へ」講師:中村桂子 長崎大学核兵器廃絶研究センター准教授
2021年9月25日(土)14時から16時まで中村桂子さん(長崎大学准教授)による第4回脱軍備・平和基礎講座「協調的安全保障体制-朝鮮半島非核化から北東アジア非核兵器地帯へ」がオンラインで実施された。受講登録者31名(通し参加27名、単発参加者4名)のうち、ズーム生配信に参加したのは21名であった。
講義は一般の人々が抱く疑問を意識して組み立てられた非常にわかりやすいものであった。話は今年1月に発効した核兵器禁止条約(核禁条約)から始まった。講師の中村さんによると、学生の多くは、核禁条約署名に賛成だが、今は署名すべき時期でなく、アメリカに核兵器で守ってもらいたいし、アメリカを怒らせてはいけないと考えているそうだ。学生も、核兵器廃絶という理想と不安定な国際環境という現実の間で思い悩んでいるようである。そうした中で、非核兵器地帯が理想と現実をつなぐ架け橋になり得ると中村さんは主張する。こうした切り口から、すでに存在している世界の6つの非核兵器地帯とモンゴル非核兵器地帯地位が紹介され、北東アジア非核兵器地帯構想の説明がなされた。
その後は、北東アジア非核兵器地帯について学生からよく出される疑問が紹介され、それに中村さんが答えるかたちで講義が進められた。例えば、北朝鮮が核兵器を保有してしまった現在、朝鮮半島の非核化はもう無理ではないかという疑問に対して、中村さんはこう答えた。確かに北東アジア非核兵器地帯設立に向けてのハードルは高くなったかもしれないが、2018年の米朝シンガポール合意で、北朝鮮は朝鮮半島の非核化を約束し、米国は安全の保証を与えることで合意しており、朝鮮半島の非核化がまったく無理ということはない。核軍拡競争という過去の過ちを繰り返さないために、非核兵器地帯の設立は有効な安全保障の方途でもあるという趣旨の議論を展開した。
また、北東アジア非核兵器地帯ができても、米中ロが核兵器を放棄しなければ無意味ではないかという意見に対しては、北東アジア非核兵器地帯ができれば、南北朝鮮と日本は米中ロから核攻撃を受けないという保証(消極的安全保証)を受けることになり、非核兵器保有国3国の安全は保たれる。また、非核兵器地帯が広がれば、核保有が非難される状況が強まり、米中ロの核放棄に向けての圧力ともなるという趣旨のことを答えていた。
北東アジア非核兵器地帯構想の実現に向けて、どうしたら一般世論を納得させられるのかという講師の強い問題意識が感じられた講座であった。
(文責:渡辺洋介)