2022年度 第2回「脱軍備・平和基礎講座」報告

公開日:2022.07.07

「キラー・ロボットの時代がやってくる!?」講師:畠山澄子(ピースボート)

2022年6月25日(土)14時から16時まで畠山澄子さん(ピースボート)による2022年度第2回脱軍備・平和基礎講座「キラー・ロボットの時代がやってくる!?」がオンラインで実施された。講座には合計22名(通し参加者12名、単発参加者2名、スタッフ8名)が参加した。

畠山さんは昨年度の第8回脱軍備・平和基礎講座につづいて2回目の登場である。講義内容の多くは前回の講義と重なっていたが、改めて人類が抱える根本的な問題を考えさせられた。ここでは今回、印象に残った点をいくつか述べたい。

講義では、とりわけドローン兵器が非人道的な兵器である事実が示された。畠山さんが示したデータによると、19人を攻撃目標とし、その全員をドローン兵器で殺すまでに、なんと155人もの関係のない人々が誤爆や巻き添えで殺戮されたとのことだ。このケースでは、ドローン攻撃による死者のうち89%は無辜の人々である。また、別のデータによると、ドローン攻撃による死者のうち98.4%は無辜の人々か、テロ組織の末端の人々であったそうだ(攻撃対象である主犯格のテロリストの死者が死者全体に占める割合はわずか1.6%)。こうしたデータを示しながら、畠山さんは、ドローン攻撃による誤爆や巻き添えの被害の大きさは、人間が対面で攻撃をした場合よりはるかに大きいという事実を提示した。その一因として、対面攻撃では捕虜を取ることで犠牲を減らすことができるが、ドローン攻撃ではそれができないという事情があるようだ。こうした話を聞くと、誤爆や巻き添えの多いドローン兵器の使用は、国際人道法の軍事目標主義に反するもので、一刻も早く、ドローン兵器を禁止する、もしくは制限する法的枠組みを国際社会で築く必要があるのではないかと感じた。

また、講義では、兵器の自律化が進むと、これまでの基準では対処が難しいケースが出てくるという話があった。例えば、自律型ロボット兵器が、誤作動やエラーで無辜の人々を殺してしまった場合、いったい誰が責任をとるのかという問題がある。ロボットに責任を問えない以上、その製作者の責任となるのか、あるいは、ロボット兵器の使用を許可した政治家など指導者の責任となるのか。これは、ロボット兵器が戦場に投入された場合に明確にしておくべき1つの大きな課題である(そもそも、ロボット兵器の開発・製造・使用が禁止されるべきであるが)。

今回の講義を聞いて、新たな科学技術が開発されるとすぐに軍事利用を考え、あるいは、軍事目的のために科学技術を開発し、それに多額の資金と有能な人材を投入するという、長年人類が抱えている根本的な問題を改めて考えさせられた。いつまでたっても変わらない愚かな人類という現実をつきつけられ、重い気分になっていたところ、質疑応答で畠山さんから希望を感じられる話があった。畠山さんが講義を受け持っている大学の大学生など若い世代は、SGDsに見られるようなグローバルな視野・世界観を持ち、何が正しいかを見分ける感覚がより研ぎ澄まされているという。彼らは、常に先端技術を軍事力に転化し多くの資金と労力をかけて「安全」を確保しようと血眼になることの馬鹿さ加減も直観的に見抜いているのではなかろうか。こうした人々が世論を動かすようになれば、人類が長年続けてきた愚かな行動に終止符を打つことも遥か遠い夢ではなくなるかもしれないと感じた。

(文責:渡辺洋介)