第8回「脱軍備・平和基礎講座」報告
公開日:2022.03.10
「迫り来るAI・ロボット兵器の時代」講師:畠山澄子(ピースボート)
2022年1月22日(土)14時から16時まで畠山澄子さん(ピースボート)による第8回脱軍備・平和基礎講座「迫り来るAI・ロボット兵器の時代」がオンラインで実施された。受講登録者39名(通し参加27名、単発参加者12名)のうち27名が参加した。
技術が進み、機械が人間の介入なしに動けるようになってきている。ドローンは配達、農薬散布、災害が起きた場合の状況把握、五輪開会式でのショーなど、多様な目的で使われている。掃除をするロボットもある。しかし、ドローンやロボットは兵器としても使われており、殺人も行えるようになった。
軍事の世界では、ドローンより無人航空機(UAV)という言葉が使われる。偵察、攻撃、運搬、パトロール、爆発物探知が無人で行われるようになった。戦争の無人化を進める理由はいくつかある。無人化なら兵士の訓練が不要になる。人が人を殺すには心理的な訓練を積む必要があるが、その手間を省ける。そして、戦死者を減らせる。そうなれば、戦争反対の世論が盛り上がらなくなり、戦争の継続が可能になる。ドローンは部隊の駐留経費を減らすこともできる。さらに、無人機で「スマート」に標的を殺害できれば原爆投下のような大量殺人を防ぐことができ、相手側の犠牲も減らせる。
米国のオバマ大統領はノーベル平和賞を取ったが、戦争でドローンを使うことに非常に積極的で、オバマ政権期に戦争の「合理化」が進んだ。1,800回以上ドローン攻撃を行ったと言われている。トランプ政権もこの流れを踏襲した。全ての情報が公開されているわけではないために正確な回数は分からない。合理化して標的をどんどん殺害していけばテロはなくなるというのが対テロ戦争が始まった時の理念だった。しかし、テロはなくなっていない。報復テロは増えているし、米国などへの憎しみは消えず、憎しみの連鎖を助長している。
現実には辛うじて人間が介入しているが、兵士の管理抜きに動ける戦闘機が出てきている。X-47Bという無人戦闘機は離陸から着陸までオペレーターの指示なしに動ける。リビアではKARGUという、自分で発射できる無人攻撃機が使われたと言われる。ドローンが群れになってお互いに情報交換をしながら標的を攻撃することも技術的に可能になった。
自律型兵器は、「合理化」という言葉で片づけられない問題をいくつも孕んでいる。
1. 市民への攻撃は国際人道法違反であり、市民を巻き添えにするドローン攻撃はどこまで正当化できるか。ロボットに市民と兵士の区別をどう付けさせるか。一般市民の存在は軽視されるという、ドローン攻撃に関わった人の証言もある。実際、標的殺害のために大勢の無関係の人たちが巻き添えになっていることがNGOの調査で明らかになっている。
2. 地上誘導センターからドローンを操作し標的を殺害する業務と日常生活との乖離に耐えられなくなるドローン兵士が出現している。直接戦闘とPTSDの比率が変わらないという調査結果もある。
3. 自国の兵士が死ななければそれだけ戦争をするハードルが下がるかもしれない。
4. 大事故が起きた場合、エンジニア、オペレーター、司令官などの内、誰に責任があるのかが分からない。責任の所在が曖昧になれば、それだけ無責任な行動が増える。責任の所在をはっきりさせて、責任を負わせる仕組みを作ることが大事。
5. ドローンや殺人ロボットの開発のハードルは低く、技術がものすごい勢いで拡散している。当初は米国、イスラエル、中国、英国といった国々しか持っていなかったが、今は多くの国々がドローンを開発し、輸出している。
人間とロボットが共存していく流れは止まらない。ロボットは私たちの生活を豊かにする一方で、戦争にも使われる。どのような未来を選ぶかを1人1人が考えていかなければならない。その際に大切になるのは、技術が進歩する中で生まれる負の側面は必ずしも見えるわけではないということで、自信過剰になるのではなく、謙虚さを持ちつつ、科学技術と向き合うことである。
(文責:ドゥブルー達郎)