第5回「脱軍備・平和基礎講座」報告
公開日:2021.11.10
「日米安保体制と在日米軍」講師:梅林宏道 ピースデポ特別顧問
2021年10月23日(土)14時から16時まで梅林宏道さん(ピースデポ特別顧問)による第5回脱軍備・平和基礎講座「日米安保体制と在日米軍」がオンラインで実施された。受講登録者37名(通し参加27名、単発参加者10名)のうち、ズーム生配信に参加したのは25名であった。
講義では、まず、「脱軍備」の意味について簡単に触れたのち、世界各地に展開する米軍全体の構造とその中における在日米軍の位置づけが示された。その後、日米安保条約の条文が丁寧に紹介された。意外だったのは、日米安保条約の条文を見ると、国連憲章との整合性が強く意識されており、日本国憲法と同様に、武力による紛争の解決を禁止し、侵略があった場合は国連安保理が対処するという戦後の構想を前提として条文が書かれていた点であった。周知の通り、米ソ冷戦で安保理が機能不全に陥り、国連常設軍は組織されず、今もこの構想は実現していないが、日米安保条約の条文を読むと、冷戦の真っただ中においてもこの構想を否定できなかったことが垣間見れる。やはり、国連憲章や日本国憲法の背景にある、武力による紛争の解決を禁じ、違反があった場合は国連が対処するという集団安全保障の考え方が本来目指すべき方向性だと考えられ、無下に否定できなかったのであろう。
講義では、日本の平和主義の理念を具現化する憲法9条と非核3原則を国際的な枠組みを作ることによって実現していこうという構想も示された。憲法9条の専守防衛については、国際的に認められた「専守防衛地位」というものを作り、国際約束として自衛隊の装備と態勢を侵略戦争ができないものに制限することで実現すべきことが示された。核兵器を作らず、持たず、持ち込ませずの「非核3原則」については「北東アジア非核兵器地帯」を日本と南北朝鮮で形成し、米国、中国、ロシアから非核兵器地帯に対しては核攻撃をしないという消極的安全保証を取りつけることで実現するというアイデアも示された。
憲法9条、非核3原則といった日本の平和主義を支える2本柱は、残念ながら、現実には安全保障環境への対応が優先され、完全には守られていない。今や自衛隊は専守防衛の観点からは不要な空母や水陸機動団といった他国を侵略できる装備をいくつも備えており、憲法9条の理念に反した状態にある。非核3原則についても、核兵器を「持ち込ませず」という原則が守られていなかったことは公然の秘密ともいわれている。今日、憲法9条も非核3原則も実態において空文化の危機にあり、そうした流れを押しとどめるためにも、国際的な枠組みを作ることによって平和主義の理念を実現するという発想は重要だと感じた。
武力による紛争解決の禁止と国家による戦力の不保持という憲法9条の理念は、国連の集団安全保障が機能することを前提として構想されたものであるが、人類社会がこの方向性を目指すべきであることは今も変わりはない。講義の中で梅林さんは「憲法9条は一周進んでいるのに、今の日本の政治家はそれが一周遅れているかのように感じている。それを変えないといけない」と漏らしていたが、まさにその通りだと思った。
(文責:渡辺洋介)