2020年NPT再検討会議第1回準備委員会でのピースデポ発言

2017.05.04

2020年NPT再検討会議第1回準備委員会(ウィーン)で、北東アジアの核リスクに関し、全文以下のような発言を行いました。


ピースデポ発言
北東アジアにおける核リスクの低減と軍縮
2017年5月3日、国連ウィーン

ありがとうございます、議長、代表団のみなさん、市民社会の仲間たち、

3月に米国国務長官が、朝鮮半島における現在の危機を解決するため「全ての選択肢がテーブルの上にある」と述べ、4月には米国大統領が「もし(中国が)手助けをしないと決めたならば、米国は中国抜きで問題を解決する」とツィートしたように、北東アジアにおける軍事的緊張はここ数か月間、きわめて高いままです。核戦争が、事故や誤算によっていつでも起こりかねないという差し迫った危険があります。

我々は北東アジアでの核と安全保障の問題に対する持続可能な解決方法を、待ったなしで見つけ出さねばなりません。そしてそのためには、現在の危機が歴史的背景に深く根ざしていることを認識する必要があります。

1953年の朝鮮戦争の停戦以来、休戦協定が平和条約に置き換えられたことはありません。1958年から1991年まで34年の長きにわたって米国は大韓民国(ROK)の土地に戦術核を配備してきました。朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)を仮想敵として標的にした米韓合同軍事演習が繰り返し行われてきました。冷戦後でさえも西側のDPRKに対する敵視政策が続き、DPRKは絶え間ない米国の核兵器の脅威にさらされてきました。

DPRKが国連総会において「(米国が)核の脅迫を続ける限り、DPRKは質的、量的に自衛のための核戦力をさらに増強し続けるだろう(リ・トンイルDPRK大使、2016年10月)」と発言したのはこうした状況でのことです。そして、ROKと日本は米国に拡大核抑止の強化を要請しています。この核のエスカレーションにより弾道ミサイル防衛を伴う新たな軍備競争が生まれ、それが中国やロシアを含む国家間の緊張をつくり出しています。この負のスパイラルを止めることが至上命題です。

DPRKだけに核プログラムの放棄を要求することはこの悪循環を終わらせるのに正しい解決策ではありません。休戦協定を平和条約に変えること、ROKと日本の核武装を禁止すること、地域内の非核兵器国の安全保障をすることを含む、相互に密接に関連する問題を包括的に解決する必要があります。

包括的解決の不可欠な一部分として、北東アジア非核兵器地帯(NEANWFZ)構想が学術界やNGOの間で議論されてきました。2015年に長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)は、地域の平和と安全のための鍵となる問題を解決する方法とともにNEANWFZの設立を目指す「北東アジア非核化のための包括的枠組み合意」を提案しました。非核兵器地帯に関しては、「スリー・プラス・スリー」案が提案されています。この案によれば2つの国家カテゴリーがあります。地域内の非核兵器国群、つまりROK、DPRK、日本と周囲の核兵器国群、つまり米国、中国、ロシアです。後者のカテゴリーの国家群が前者のカテゴリーの国家群に消極的安全保証を与えます。

ROKと日本でNEA-NWFZ構想を推進する議員の努力がありました。ROKと日本の議員92名がNEA-NWFZを支持する声明に賛同しています。2008年に日本で、当時野党第一党であった民主党の主要な議員連盟(率いていたのは元外相)がNEA-NWFZモデル条約案を発表しました。日本の地方政府レベルでは546もの首長がNEA-NWFZ設立のための声明に署名しました。加えて、最近、宗教指導者が力強い声明「米国の核の傘への依存を止めることを日本に要求し、北東アジア非核兵器地帯設立へと向かう」を出すという新しい動きが始まりました。また、国連で重要な進展がありました。事務総長への軍縮問題に関する諮問会議は国連に対し、NEA-NWFZの設立に向けて適切な行動をとることを2013年に勧告しました。

この地域における核戦争のリスク低減は緊急の課題です。DPRK、ROK、日本の市民を核の脅威から等しく解放する地域的機構の設立が必要です。我々は現在の危機を、持続可能な地域の平和と安全保障のための行動を起こす機会とするべきです。我々は関係する政府が戦争の瀬戸際に向かってお互いを脅迫し合うのではなく、むしろ交渉へ向けて大胆な一歩を踏み出すことを要求します。

(発言者:山口大輔)

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