[声明]日本被団協のノーベル平和賞受賞にあたって ピースデポ

2024.12.01

日本原水爆被害者団体協議会(以下、日本被団協)の2024年度ノーベル平和賞受賞にあたって、私たちは、核兵器と戦争のない世界をめざす同じ志を持つ運動仲間として、日本被団協に心からの祝意を表すとともに、受賞によって私たちの運動に大きな希望がもたらされたことを喜び、日本被団協に深く感謝致します。また、この受賞は、1945年8月、広島、長崎で被爆した直後に、爆風、熱線、そして放射線により生命を絶たれた10数万人に及ぶ人々を初め、生き残ったとしても被爆者として幾多の苦難を生きてこられたすべての方に向けられたものだと思います。その中には朝鮮人、中国人をはじめとした外国人被爆者が数多く含まれていたことも改めて認識致します。また、各地の空襲被害者を含む民間人戦災者とともに被爆者も国家補償の対象外とされ、80年近くに及び正当な権利を剥奪されている状況にあることも忘れてはなりません。

日本被団協はこれまでに何度もノーベル平和賞の候補に挙げられ、被爆60年の2005年には最終段階まで残りました。それが、2024年に具体化したことには2つの意味が込められていると思います。

ノルウェー・ノーベル委員会は、授賞理由において、まず「『ヒバクシャ』として知られる広島と長崎の原子爆弾の生存者たちによる草の根運動は、核兵器のない世界の実現に尽力し、核兵器が二度と使われてはならないことを証言を通じて示してきたこと」に対して平和賞を授与するとしています。1956年の結成以来、核兵器の非人道性を国際社会に訴え、核兵器禁止条約の成立にも多大な貢献をした日本被団協の受賞は、核兵器廃絶が人類共通の目標であるとのノーベル委員会の強いメッセージです。さらに受賞理由は、「80年近くの間、戦争で核兵器が使用されることがなかった」のには「日本被団協やその他の被爆者らによる並外れた努力が、核のタブーの確立に大きく貢献した。だからこそ、この核兵器使用のタブーがいま、圧力の下にあることを憂慮する」としています。また「核保有国は核兵器の近代化と改良を進め、新たな国々が核兵器の保有を準備しているように見える。現在起きている紛争では、核兵器使用が脅しに使われている。人類史上、今こそ核兵器とは何かに思いをいたすことに価値がある」としています。ウクライナ侵攻を続けるロシアが核兵器使用の威嚇を繰り返し、パレスチナでは核兵器保有国であるイスラエルがジェノサイドを続けていることが念頭にあることは明白です。この状況において、日本被団協が確立に貢献した核兵器使用のタブーと「ふたたび被爆者をつくるな」の想いを世界規模で共有しようとのノーベル委員会の意思が示されています。これが授賞に込められた第1の要素です。

第2の要素は、「いつの日か、歴史の証人としての被爆者はいなくなる」という時間の制約に関わります。来年は被爆80 年、すなわち生誕直後に被爆した被爆者も80歳になります。授賞理由は、「記憶を残すという強い文化と継続的な取り組みで、日本の新しい世代が被爆者の経験とメッセージを継承している。それによって彼らは、人類の平和な未来の前提条件である核のタブーを維持することに貢献している」とし、被爆80年を前に被団協の活動が次の世代にひきつがれていくことを支援する強い思いが込められています。

日本被団協が2001年に発表した「21世紀被爆者宣言」は、「核兵器も戦争もない21世紀」をめざす決意を表明しています。核兵器の使用は戦争の中で起きていくことを踏まえ、被爆者は、核兵器も戦争もない世界を目指しています。これは脱軍備や不戦をめざす立場であり、私たちは心から共感します。

私たちピースデポは、軍事力によらない安全保障体制の構築をめざして、調査研究活動を進めることをモットーに活動してきました。核兵器も戦争もない世界を実現させるためには、国益をかざして軍事力により自らの安全を保障していく思考から抜け出し、すべての国は安全への正当な権利を有することを認め合う「共通の安全保障」(コモン・セキュリテイ)の原則を人類社会に広げていかねばなりません。

核兵器のない世界を目指すとき、当然、核兵器国や核兵器依存国も核兵器禁止条約に参加しなければなりません。それには、すべての国が核兵器に自らの安全を依存する核抑止政策を止めることが不可欠です。その1つの答えは地域的な非核兵器地帯を作ることで具体化できます。日本に引き付けていえば、日本政府が、日本、韓国、北朝鮮の3か国で地理的な北東アジア非核兵器地帯を、米ロ中の3つの核兵器国による安全の保証を義務づけながら設立しよう、と提案していくことで、<非核の傘>のもとで安全と安心を確保していく道が見えてくるはずです。これは共通の安全保障の一つの具体的な姿です。

日本被団協の21世紀被爆者宣言は、「憲法が生きる日本、核兵器も戦争もない21 世紀を—。私たちは、生あるうちにその『平和のとびら』を開きたい」と訴えています。被爆者の皆さんのたゆまぬ「ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ、ノーモア・ヒバクシャ」、そして「ノーモア・ウオー」の想いを心に刻み、今後も日本被団協の皆さんと連携し、核兵器の廃絶と戦争のない世界をめざし努力していきます。

2024年12月1日