【資料】核兵器禁止条約議長草案に関する核不拡散・核軍縮アジア太平洋リーダーシップ・ネットワーク(APLN)声明(全訳)
公開日:2017.09.15
下記に署名した私たちAPLNのメンバーは、核兵器禁止条約の交渉の任務を課された国連会議の議長が提出した、核兵器禁止条約案(A/CONF.229/2017/CRP.1、2017年5月22日)を歓迎します。私たちは、条約案が、これまでに発明された中で最も無差別で非人道的な兵器を禁止するための長期間にわたる運動の中で、重要な一里塚であると考えています。人道主義の原則に根差した条約案のテキストは、最終的な核兵器廃絶に向けた大きな一歩として、核兵器の取得、開発、生産、製造、保有、実験、移転、国外配置と使用を明確に禁止するための、交渉を妥結させる上での適切なたたき台になります。
核兵器が存在し、とりわけ今日のようにいまだに大量に存在している限り、意図的であれ、偶発的であれ、ならず者あるいはテロリストの活動によるものであれ、核戦争の危険が常に存在します。核兵器禁止条約の交渉は、核軍縮の進展が停滞していることや、核兵器国が、核軍縮交渉を行いかつ完結させるというNPT下の義務を真摯に受け止めていないことに対して、大多数の国が抱いている強い懸念の結果であります。
核兵器国とその同盟国(残念ながらアジア太平洋地域の数か国も含まれています)が禁止条約交渉に参加していないという事実により、核兵器国の姿勢に対する懸念は一層強まっています。交渉に参加すれば、核兵器国は、自国の立場を説明し、核軍縮義務を果たす意思や考慮したい実際上の懸念をを表明し、条約の条項に影響を及ぼす機会を得ることができます。NPTに非加盟の核兵器保有国は、交渉に参加することで、核兵器の不拡散、不使用、実験禁止といった核兵器に関する国際的規範を支持し、そしてNPT上の核兵器国の軍縮義務と類似した軍縮の義務を受け入れるという意思を、示す機会を得ることができます。
不参加の諸理由を挙げる中で、核兵器国は、核兵器禁止条約は非現実的であり、実践的で段階的な軍縮への努力を損ない、NPTを損なうと主張しています。私たちは、このような主張を受け入れません。
• 今日の状況下では、期限付きの核軍備撤廃の誓約は非現実的かもしれませんが、条約案ではそのようなことを提案してはいません(条約案5条を参照)。むしろ核保有国は、同条約の下で、締約国会議に核軍備撤廃の計画を提出することができます。どのようなプロセスや時間枠を計画するかの決定は、計画を提出する各国に任せられています。
• 禁止条約が実践的で段階的な核軍縮への努力を損なうという主張は、核保有国が、そのような段階的な努力を何ら実行しておらず、また議論すらしていないという事実に照らすと、説得力がありません。私たちは核保有国がこうした段階的な取り組みに関する交渉を一日も早く開始し、目に見える成果につなげるよう求めます。
• 禁止条約は、NPTを損なうことはありません。NPT締約国の約3分の2が禁止条約交渉に参加しています。対立を生じさせているのは、交渉をボイコットしている少数のNPT締約国です。禁止条約は、NPTを損なうどころか、締約国が半世紀近くにわたり達成に力を尽くしてきた、NPTの諸目的を推し進める上での助けになります。
核兵器国は、NPTが、核兵器国に核軍縮を誠実に交渉する義務を課しているということを忘れてしまっているようです。核兵器禁止条約は、核兵器を非合法化することにより、核兵器と通常兵器の間の規範上の境界線を再確認し、核兵器が永遠に存在するという考えに打撃を与えます。同条約は、核兵器国に、新たな核兵器システムの計画と「近代化」計画を考え直させ、核兵器をどのように削減し廃棄できるかについて真摯に考え始めさせるものでなければなりません。
このような理由で、私たちは、全ての国が核兵器禁止条約の目的を支持することを求めます。条約に最初から参加できる国はそうすべきであり、現在核兵器を持っている国は、条約案の第5条で求められている、核軍縮のためのさらなる効果的な措置の提案の作成を開始すべきです。
(訳:ピースデポ)
原文: www.a-pln.org/statements/statements_view/APLN_Statement_on_the_Ban_Treaty