資料:長崎の若者による「核兵器のない世界を求める声明と提言」
公開日:2017.05.01
第26回国連軍縮会議(共催:外務省、国連)のプレイベントとして、「ユース非核特使フォーラム」が16年12月11日に長崎市で開かれた。被爆の実相の継承を担う国内外の若者14人が参加し、議論の成果をまとめた「声明と提言」を発表した。「声明と提言」は、「人間や都市、自然を脅かす核兵器と人類とは、平和的に共存できないと確信しています」と述べ、全ての国、核保有国、非保有国、一般市民特に若者、の4者に向け具体的提言を行っている。核兵器禁止条約交渉の開始も強く意識した内容となっている。出典:外務省ウェブサイト
(仮訳)
若者による核兵器のない世界を求める声明と提言
(2016年12月11日、長崎)
私たちは、今日、71年前に原子爆弾を経験した都市である長崎に集まりました。若者として、核兵器のない世界に向けた歩みをいかに進めるかについて、自分たちの見解を示すためです。
核兵器を巡る情勢は、今大きな転換を迎えようとしています。今年は、広島でG7外相会合が開催され、アメリカのオバマ大統領が広島平和記念公園を訪れ、印象的な演説を行いました。来年には、今年の国連総会での決議に基づいて、核兵器を禁止する、法的な拘束力のある条約についての交渉が始まります。
歴史や文化、安全保障上の懸念の違いを受け、各国の核兵器に対する認識は異なっています。核兵器が安全保障にとって必要だという主張が幅を利かせており、いまだに世界には1万5千発以上の核兵器が存在しています。その上、核兵器を保有する国や日本を含む「核の傘」の下にある国々の一部は、核兵器の禁止に対する期待の高まりに反して、上記国連総会決議に反対しました。
しかし、私たちは、人間や都市、自然を脅かす核兵器と人類とは、平和的に共存することはできないと確信しています。広島や長崎の原爆を辛うじて生き延びたにも関わらず、放射線の後遺症による肉体的な苦しみや、差別による精神的な苦しみを味わってきた被爆者は、核兵器保有の危険性について世界に警鐘を鳴らす存在です。
将来を担うのは若者であり、私たちは、核兵器のない世界の実現という共通の目標と、原爆の悲惨な現実と、もう二度とこのような悲劇を繰り返してはならないという被爆者の方々の想いを受け継いでいく覚悟を、共に抱いています。
私たちは、お互いに学びあい、歴史や文化の違いを乗り越えるためにアイデアを出し合うことを通じて、核兵器のない世界に向けて、若者の先頭に立っていきます。
私たちは、全ての国と市民の皆さまに、核兵器のない世界の実現に向けた更なる努力を求め、そして次のことを提案します。
全ての国へ
★核兵器不拡散条約(NPT)に含まれている約束も含めて、核軍縮・不拡散に対するコミットメントを十分に果たすこと。
★核軍縮を加速させるため、NPTの執行機能の改善や、核兵器を禁止する法的拘束力のある条約の交渉などを通じて国際的な法的枠組みの強化をすること。
核兵器を保有している国へ
★核兵器保有の必要性について、安全保障や政治、経済性などの観点から再考し、国家の安全保障と国際的な地位を維持するための他の方法を模索すること。
★全ての核兵器国は、NPT上の義務を果たし、保有する核兵器の数を削減するための具体的な行動を取ること。
★自国及び世界をより安全にするため、NPT非締約国は、速やかに非核兵器国としてNPTに加入すること。
★少なくとも1つの国が、自国の核兵器プログラムを放棄することで模範を示し、「核兵器のない世界」の実現に向けた取組に参加することを期待する。
★国際的な安全保障環境の安定化に繋がらない、核兵器の近代化をやめること。
★不必要なリスクと危険をもたらしている即時発射警戒態勢から全ての核兵器を外し、また誤発射を防ぐこと。
★核兵器の管理には経験豊富な人員を配置し、事故を起こさないよう厳格に管理し、兵器利用可能な物質が、テロリストなど、それを盗もうと企てる人の手に渡らないようにすること。
核の傘の下にある国を含む、非核兵器国へ
★非核兵器国であり続け、「核兵器のない世界」の実現に向けたリーダーシップを発揮すること。
★「核の傘」に頼っている国は、その有効性や信頼性、リスクなどを踏まえて、現行の政策をやめ、非核兵器地帯の設置を含めて、核兵器に頼らない安全保障の枠組みを構築すること。
★核兵器の使用は、深刻な人権侵害であり、「核の冬」を含めた人道的および環境的に甚大な影響を世界規模で及ぼすことを発信するとともに、国際連合など安全保障を扱う機関に対して、核兵器のそのような側面に注目するように働きかけ、主要な課題とすること。
★非核兵器国が一丸なって、核兵器国が核軍縮の努力を加速させるように働きかけたり、核兵器を禁止する条約を策定することなど、核兵器のない世界の実現に向けた取組みを行い、それらの取組を核兵器国も巻き込んで国際社会全体で行うようにすること。
★日本は、唯一の戦争被爆国として、「核の傘」に頼ることをやめ、国際社会に対して核兵器の恐ろしさや非人道性について強いメッセージを発信し、また、核兵器を禁止する法的拘束力のある条約の交渉において積極的な貢献を行うこと。
世界の一般市民、特に若者へ
★核兵器が存在することにより我々の安全や環境、生存が脅かされており、核兵器は、現代の極めて重要な課題だと理解すること。核兵器は、危険で無責任でコストのかかる兵器であり、我々の安全や平和の保証には繋がらないと認識すること。
★広島・長崎の原爆や核実験などの核兵器がもたらす悲惨な現実、そして戦争一般についての悲惨な現実について、加害と被害の双方の視点から学び、決して忘れず、まわりの人たちにも同じようにすることを促し、記憶の風化を防ぎ、過ちを繰り返さないこと。
★一人ひとりの意見が重要であること、そして未来は我々の手の中にあることを信じ、様々な革新的なツールを使って発言すること。例えば、
— ソーシャルメディアを活用して、各国政府や国際機関に対して働きかけること。
— 若者に対して、政治的な議論や、関連する草の根活動に参加する機会となるプログラムを開発すること。
— 核兵器の壊滅的な影響についての理解促進のため、スマートフォン等のためのアプリなど、デジタルな教育ツールを開発し、教育現場でも活用すること。