<資料2>オーストリア代表トマス・ハイノツィ大使の声明(抜粋訳)
公開日:2017.04.14
【資料2】
オーストリア代表トマス・ハイノツィ大使の声明(抜粋訳)
2016年10月14日
(前略)
本委員会でのこれまでの議論の中で、我々の決議案に関する数々の疑問が提起された。
まず第1に、禁止条約が国際的な不拡散・軍縮体制の要たるNPTと両立するのかという点が挙がった。我々の見解では、提案されている条約はNPTと完全に整合するだけでなく、特に6条の履行について大きな前進となりこれを促進する。NPTの定義する非核兵器国にとっては、禁止条約は核兵器を追い求めないとの既存の誓約をいっそう強める。NPTは特定の5か国による核兵器の保有を認めているが、NPTが無期限の保有を容認する静的な条約でないことは明らかだ。むしろ、グローバルな核軍縮という目標が明確に述べられている。新たな規範への署名、批准により、これらの国々は6条下の軍縮義務を果たすことになる。
核抑止は国家安全保障にとり不可欠だという議論がよく聞かれる。オーストリアはこれを信じない。もしもその通りだとすると、もっと多くの国が同じ論理に従う必要を感じ、これら兵器を入手したいと思うはずである。我々は危険な道に踏み出すことになる。核兵器のいかなる使用によってももたらされる壊滅的な人道上の結末は――意図的であれ事故によるものであれ――受け入れられるものではなく、これが使用者自身に跳ね返ってくるのは避けられない。したがって、冷静に分析すれば核兵器保有は安全保障にとって不都合である。幸い、この見解は我が国のみにとどまらない圧倒的多数の国のものである。これら諸国は核兵器入手の計画を持たず、極端に言えば地球規模で集団自殺を図るという脅しではない、より人間的で理性的な基盤の上に自国の安全保障を築くことに成功している。この文脈において、かつては核兵器入手計画あるいは核兵器自体を持っていたものの、その肯定面と否定面を慎重に検討した結果これを放棄することに決めた国々の例は、大いに示唆的である。
禁止条約の交渉は非現実的な選択肢だと主張する声もある。我々は、過半数の国々が参加する交渉過程が信用性や現実性を欠いているとは思わない。類似の法的拘束力ある文書で初めから普遍性を備えていたものはなく、ゆえにここでもそれは期待しない。
我々はまた、核兵器の廃棄は一夜にして、また禁止条約のみによって成し遂げられるようなものではないことも現実的に承知している。むしろ禁止条約は完全かつ裏付けのある履行を確実にするのに必要な仕組みを確立するための基盤を築くであろう。大量破壊兵器を扱う法的拘束力のある文書での経験が示すように、まず法規範が形成され、次にその履行のための具体的、実践的、法的な諸措置が続かなければならない。化学・生物兵器、対人地雷、クラスター弾を例にとると、それらはすべて禁止条約の採択の後で廃棄が始まった。核兵器について類似のアプローチが成功しないという理由はない。
オーストリアは、核兵器のない世界の達成という何より重要な目標に寄与するすべての法的、実践的措置を全面的に支持する。例えばCTBTの発効と普遍化、FMCTの交渉、核軍縮のための効果的な検証手段の構築、核兵器国による消極的安全保証の提供や先行不使用政策の採用、警戒態勢解除のための諸措置、安全保障ドクトリンにおける核兵器の役割の重要性の低減、その他の措置である。これらすべての措置は、核兵器を禁止する法的拘束力ある文書の制定と同時に取り組めるし、またそうしなければならないというのが我々の信ずるところである。(後略)
(訳:ピースデポ、強調は編集部)