【資料】南スーダンPKO国会論戦 ――日本政府、「参加5原則は守られている」   (16年10~11月の衆参の委員会議事録より、関連の政府答弁を抜粋)

公開日:2017.04.13

今年7月上旬、現地首都ジュバではキール大統領派とマシャール第一副大統領(当時)派が大規模な戦闘を行い、民間人を含む270人以上の死者を出した。このような状況の中で日本政府は、10月25日、PKO派遣の17年3月末までの5か月間延長を決め、11月15日には、駆けつけ警護、宿営地の他国との共同防護の新任務を含む実施計画を閣議決定した。11月21日から部隊が段階的に現地に入っている。新実施計画は12月12日から適用される。ここでは、PKO参加5原則に関連する政府答弁を紹介する。(出典:国会会議録検索システム。引用部分の強調はピースデポ)

270人以上が死亡しても「戦闘」ではなく「衝突」

答弁:「(7月上旬の事案について)武器を使用して人が亡くなる、さらには物が損壊するという事態は生じましたが、(日本政府はマシャール派を国、国に準ずるものと認定しないので)それは法的(周辺事態法、PKO法)な意味における戦闘行為ではなく、衝突であるというふうに思います。」
(稲田防衛大臣。10月11日参院予算委員会。質問者は民進党・大野元裕議員。)

「戦闘」と「衝突」はどう違う?

答弁:「(前略)政府としては、一般に、実力を用いた争いが我が国のPKO法における武力紛争に該当するか否かは、今御説明のとおり、事案の態様、当事者及びその意思等を総合的に勘案して個別具体的に判断するということにしております。このうち、事案の態様でございますが、これは、ある実力を用いた争いが散発的、偶発的なものであるか否かということでございます。また、当事者とは、当該争いの主体が系統立った組織性を有しているか、また、支配が確立されるに至った領域を有しているかといったことでございます。意思とは、当該争いを起こした主体が事案の平和的解決を求める意思を有しているか否かということでございます。」(前後で「マシャール派を含む争いは散発的で、同派は系統立った組織性と支配を確立した領域を有さず、平和的解決を求める意思を有するので、紛争当事者にあたらない。よって7月の事案は戦闘行為ではなく衝突である」との趣旨の説明。)
(宮島昭夫内閣府国際平和協力本部事務局長。10月28日衆院内閣委員会。質問者は民進党・大串博志議員。)

「支配地域」がないので武力紛争ではない

質問要旨:政府は「マシャール派には支配が確立した領域がないのでPKO参加5原則の1.が満たされている」と説明している。2月の第十次要員の家族説明資料ではマーシャル派の「支配地域」と書かれていたのに、7月の事案後に発行した資料で「支配地域」の表現が削除されているのはなぜか。
答弁:「第十次要員の家族説明会資料の当該ページ(16年2月1日付)は、当時の反政府勢力の活動が活発な地域が自衛隊から[原文ママ]活動するジュバとは地理的には離れているということを示すために作られたものでありましたが、現地の報道等各種情報を引用し、現地の情報が、各種報道が使っているところの支配地域との表現を用いたわけでありますが、しかしながら、南スーダン情勢に関して隊員家族の間に誤解を生じかねない不正確な記述でもありました。そのため、陸幕を通じて資料の修正を指示し、第十一次要員の家族説明会資料からは修正した資料(16年8月1日付)を使用しているところでございます。(後略)」
(稲田防衛大臣。11月22日参院外交防衛委員会。質問者は共産党・井上哲士議員。)

外国軍隊は「駆けつけ警護」の対象外

質問要旨:外国の軍隊は駆けつけ警護の対象か。
答弁:「(前略)外国の軍隊ということになりますと、それは、みずから、みずからの生命、身体を保護する能力を備える者であるということから、南スーダンにおります自衛隊の部隊は、何度も申しますけれども、治安維持活動、安全確保業務を行っているものではなく、あくまでも施設部隊、道路をつくったり施設をつくったりしている部隊が、人道的見地から、緊急の要請を受けて、そしてその対応できる範囲で行うものでございますので、通常は、外国の軍隊は想定されないということでございます。」
(稲田防衛大臣。11月15日衆院安全保障委員会。質問者は自民党・大西宏幸議員。)
      (まとめと中見出し:山口大輔)

PKO参加5原則
1. 紛争当事者の間で停戦合意が成立していること。
2. 国連平和維持隊が活動する地域の属する国及び紛争当事者が当該国連平和維持隊の活動及び当該平和維持隊への我が国の参加に同意していること。
3. 当該国連平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること。
4. 上記の原則のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は撤収することができること。
5. 武器の使用は、要員の生命等の防護のための必要最小限のものを基本。受入れ同意が安定的に維持されていることが確認されている場合、いわゆる安全確保業務及びいわゆる駆け付け警護の実施に当たり、自己保存型及び武器等防護を超える武器使用が可能。      (出典:外務省サイト「PKO政策Q&A」)